第2回 IT技術者じゃなく『ユーザー』だから経験できるダメな感じ

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システムエンジニアなどのIT技術者は、ユーザーリクエストに応じて情報の渦の中に手を突っ込み、調合して望みのものを現実世界に引っ張り出す魔法使い(またはドラえもん)みたいな能力を持っています。

すごい人達ですが、引っ張り出されたアイテムを使うのは、リクエストしたユーザー自身です。

しかし、ユーザーは表層的(一義的)な機能だけに満足し、機能を深掘り(拡張又は飛躍)しようとしないことが多い。

「ここにこのデータを出せるなら、こっちの値と組み合わせて他所との共有ツールに出来るんじゃないかな」

といった具合に発想を広げることが、付加価値を生む可能性はもちろんありますが、それはあまり期待できません。

なぜなら、ほとんどのユーザーはリクエストした機能さえあればよく、中身はブラックボックスでも構わないからです。

しかし、これではあまりにももったいない。

「何から作られているか知らなくたって、道具は使えればいいじゃないか」
という考え方もあります。

もちろんそのとおりで、我々は原材料不明なまま多くのものを使いこなしています。

汎用の無機質な成形品ならそれで問題ないかもしれません。

一方、社のシステムは、自社内リソースを丹念に掘り起こしたオーダーメイド品です。

これまで業務に携わった多数の人々の経験知が詰まっているものですから、どこにどんな有用なパフォーマンスが隠れているかわかりません。

なのに、その構成に関心を持とうともしないメンタリティでは、到底使いこなせるとは思えません。

そして、要求者が使いこなせない道具のために垂れ流される、技術者の時間と労力(他所から購入した場合は代金分の現金流出)……。

経営者からすれば「投資効果の薄い物のために、エンジニアに無駄働きをさせるな」とでも言いたくなるでしょう。

●課題『技術的難易度』に『政治的難易度』が加わる

エンジニアへのシステム開発要求は難易度が高い。

というより、素人考えで思う「常識的で当たり前のこと」を、サーバのリソースを使って実現させるには、たとえそれが簡単なニーズであったとしても、素人が思っている以上に複雑な思考変換で、エンジニアに伝えるためのロジックにしなければならない。

ゆえに、「こんなことは、こうすればできるだろう。誰だって思いつくことだ!」という当たり前の機能が、なぜか実装させられない。

使えないツールの量産に業を煮やした上層部が、現場に「ムダなものにコストをかけるな!」と規制をかけるようになる。

すると、「技術要求の難易度」に追い打ちをかけ「要求権獲得の難しさ」が加わる。
要求者(ユーザ)は苦手なITスキルで、技術者は苦手な社内政治によって、それぞれの苦行が始まります。

タイムスケジュールの管理まで口を出され、自席やフリースペースで自由にやれていた打ち合わせの場が会議室に移り、偉いさんの目が光る中で行うハメになる。

こうなると必然的に、偉いさんが納得することしか、エンジニアに依頼できなくなります。

その権力者がよほどDB活用に長けた人ならともかく、前回述べたようにそれはまず望めません。

よって、社内でのDB活用方法といえば、誰にも理解しやすい概念であるセールスやマーケティング、及びその補助的な機能、すなわち「攻め」に偏るのは仕方ないといえるでしょう。