成果主義は「成長」を放棄する

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成果主義だけだと、成長が楽しめない

ただのプレイヤーでは、ゲームで稼ぐことができない。

だからといって、誰でも簡単にプロゲーマーや人気ユーチューバ―になれるわけではないので、結局ゲームとは趣味や時間つぶし目的の消費対象になります。

「お金に対する喜び」ばかり強い仕事は気持ちが荒んでくる

成果主義の会社でひたすら業務成績のことばかりを考る毎日の中、趣味のゲームの世界に参加した時には「夢やロマン」や「キャラの成長」を楽しめるが、それが終わると只々スコアを上げさせられる日常へ引き戻される。

毎日が「イベント発生のないRPGのレベル上げ」みたいになっている。

それでも腕さえ良ければ収入は上がるかもしれませんが、そんな働き方で豊かな気持ちが育めるでしょうか?

たしかに生活は豊かかもしれないけれど、魂を揺さぶられるような感動や、人と人とのつながり人間性の成長といった意味の豊かさは?

「お金が得られる」という意味での感謝はあるかもしれないけれど、仕事ってそれだけのものだったろうか?

たしかに仕事はお金のために必要で、収入を大きくして人生の推進力が上がることは重要だ。

だが、片輪ばかりが大きくなった車は、同じ位置でグルグル回り続けて、せっかくの推進力が前へ進んでいく役に立っていない。

車輪が大きくなった手ごたえや実感はあるので、その時は人生が充実しているように勘違いするが、その虚しさというのは概ね挫折したときに初めて気づくことになる。

「馬車馬」なら前進できていたが「ハツカネズミ」だった自分は、周囲から見るとその場から全く動いていない。

家族と価値観が合わずに起きていたすれ違いの原因はこれだったのかと、それまで順風満帆だった人が、一気に色々なものを失っていく裏に、こんな筋書きがあることは否めません。

やはり、収入があるのなら、それに見合った成長があってこそ、本当の豊かさが得られるのではないでしょうか?

「リアルな世界のゲームプレイ」を社員に提供できる会社

勤め先で働くことにゲーム的要素があるのなら、仕事をプレイすることに楽しみを見出せて、収入だけでなく人間性の豊かさが享受できるかもしれません。

たとえば…

・レベルアップした自分の容姿
・ワクワク感のある次の目的地
・華麗に決まった必殺技のキレ
・仲間達に頼られる支援スキル
・働きに見合う自身への見返り

これらが魅力的に示されている『勤め先』だとしたら、ゲームプレイヤーでは得ることができないはずの「収入」が確保できます。

もちろん、一定の秩序の中で働くため制約はあります。
しかし、ゲームプレイの醍醐味は「制約」にこそあるといえないでしょうか。

制約条件との上手な付き合い方こそ、広い意味でのゲームスキルであり、初級者から上級者への階段はそこにあるといっても過言ではないでしょう。

そこで、ログイン(入社)し、チュートリアル(研修)から初級(新人)、そして上級者(中堅)から達人(幹部)に達するまでのステップを順番に示してみましょう。

・知識習得と応用

世界観への参加から知識の高度利用に至るまでを段階的に示すとこうなります。

経験 → ②経験知識 → ③経験知性

この①~③までが、ひたすら繰り返す『戦術』とします。

このうち③の経験知性は、「この結果を出すためにはコレが最適」という具合に知識を昇華させているので、それをルール化して他人に伝えるための『仕組』の領域に踏み込めます。

・『自分が動く』から『他人を動かす』へ

仕組を作り、他人に指示を与えて動かせる段階に入ると、パーティーメンバーの特性や習熟度に応じて、集団行動をコントロールできるようになります。

ルールを管理するという意味では『仕組』の領域を担当しますが、チーム全体で成果を上げるための取り組みがより高く評価されるので、『戦略』の領域が主たる仕事になっていきます。

ひとりきりで目的に向き合っていた頃とは、スケールがまるで違ってきます。

①経験 → ②経験知識 → ③経験知性 → ④統率性 となります。

・『人を動かす』から『組織を動かす』へ

指導者としての統率性の場数を踏むうちに、チームを複数持てば、もっと多くのことを同時に手掛けられると気づくようになります

たとえば、
プロジェクト(臨時組織)の同時進行
基盤セクションを備えた永続組織の立ち上げと運営
など、複数組織が会社の中で出来ることは実に多い。

こうなるとさらにステージが上がっていきます。
100%『戦略』に専念する役割です。

同じ「チーム力」を扱うにしても、④統率性の頃とはまるでスケールが違います。

こうして、戦術から仕組、仕組から戦略への道筋は、最後の要素が加わって5段階になりました。
経験 → ②経験知識 → ③経験知性 → ④統率性 → ⑤創造性

この関係性が築けるかどうか。

先ほども述べたとおり、目指すテーマや見返りの獲得例が魅力的に示されている職場は、自由度の高いゲームに似た環境になるでしょう。

「成果が上がらないのはお前が成長しないせいだ」と、従業員のせいにしている会社は、その環境を作る努力を怠っているか、成長戦略についての未認識が疑われます。

・優秀な社員に長く勤めてもらうには

給与や成果報酬などが、どのように示され、運用されているか?

給与が「永続方式で行われる見返り」成果報酬は「一時金方式で行われる見返り」だとします。

成果を上げるとベースの給与が上がる会社もあるかもしれませんが、それは下がることもあるということでしょうから、そういうのは「追加の一時金」と考えることにしましょう。

成果報酬の工夫といえば、歩合のように増販への貢献度に対するものや「改善提案コンテスト」のようなもので、経費削減への貢献にもスポットを当てている会社もあります。

一時金方式の成果報酬は、永続方式よりも「手柄」と「褒美」の関係性が明確だと思いますが、それだけに射幸心を煽りすぎてしまうリスクもあります。

長く勤めてくれる社員を求めるなら、一時金形式の薬効の裏の毒性を知らねばなりません。

これは社員側からでも同じことが言えますので、またゲームに例えてみます。

一過性のイベントに熱くなり、なけなしのアイテムを使い切ると、メインストーリーに差し障る(⇒報奨狙いで無茶をやり、体や人間関係を壊しては元も子もない)

長期プレイを楽しみたいなら、一過性の効果にすぎないイベントキャラの強化には要注意(⇒一時の報酬に目を晦まさず、報酬狙いに熱くなって職を失うハメにならないように)

つまり、長く愛顧してくれるファンのような社員でメンバーを固めたい経営者は、短期決戦に勝てばよいような人材登用/育成をするのではなく、自社の世界観に合う人材をじっくりと育て、メインストーリーへの参加に魅力を感じさせる工夫が必要になります。

・『成果への報酬』と『成長への褒美』

ストーリーの進行と自己の成長がワンセットになっていて、成長することのメリットは、読み進むためのライセンスキーが得られることだとします。

次を読みたい気持ち(やる気)に対する働き甲斐とライセンスキー。

単なる消費行動のゲームと違うのは、ゲームではこの過程でお金が入ってこないのに対し、仕事なら、ヤル気とライセンスキーでストーリーを進行させた成果に対し、お金が支給される

それならカロリー(収入)と栄養素(働き甲斐)のバランスが取れます。

このとき、お金ばかりが不自然に支給されるとか、キーを手にしていないのにページだけが早くめくられるとか、片側だけが早く得られる展開は、やはり無理があります。

ゲームでは儲け目的で、課金が頻繁に行われます。
運営側は ″成果” を、利用者側は ″時間や快適” を「早く、たくさん」欲しがるほど、この傾向は顕著です。

ただし、時間をかけて成長していく過程を有料アイテム購入などの課金ですっ飛ばしていると、やがてはマンネリ化し、プレイヤーはさらに強力な刺激を求めるようになります。

ゲームの運営会社は、利用者を引き付けておく次のネタ作りに頭を悩まし続けることになる。

彼らはそれが本業ですから仕方ありませんが、そうでない企業の経営者が、奇をてらった報酬のネタに頭を悩ますのは賢明とは言えません