チーム力を高めることが上手なマネージャーは、早くからその能力を認められて複数チームを任されることがあるでしょう。
しかし、それだけではまだ”プロデューサー”の段階には到達できません。
では、プロデューサーとはどんな役割を持ち、どういった働きをする人のことでしょうか。
所属ステージ[SSS] 活動領域 [戦略100%]
配役:プロデューサー
ミッション ⇒ 「チームの使いどころを見極めよ」
段階4に属するマネージャーは「既存チームの増強」「既存業務の拡大・充実」を果たす”チーム力の向上”を図ります。
それに対し、段階5の存在であるプロデューサーは、似てはいるが質的には全く違う働きをします。
それは、未成熟の市場にチームを投入し、これまでにない価値を創り上げることです。
「業務」というより『投機』と言うほうが、より正確かもしれません。
『統率性』の記事で述べたように、上記でいう“市場”とは「チームが活躍する場」のことで、必ずしも業界のマーケットのことだけを指すものではありません。
たとえばプロジェクトチームというものがあります。
業界マーケットに向けた外販狙いで創設されるものもあれば、社内体制の強化や働きやすい環境作りのためのものもあります。
トップダウンで作られる場合もあれば、社内有志の発案で育っていくこともある。
上からの指示でプロジェクトに組み入れられ、「自分はただの歯車の一つだ」と思ってしまうと、そのレベルでしか物が考えられなくなるので意識もしなくなりがちですが、そもそも『プロジェクトチーム』とは何でしょうか。
プロジェクトチームと、それ以外のセクションとの違いについて、明確に説明できる人は、案外少ないのではなかろうかと思っています。
“業務の特殊性”とか“新規企画の実施部隊”とか“暫定的な仕事”など、実際にプロジェクトチームに属している人は、自分の仕事をそんなふうに捉えてプロジェクトに携わっている気になることが多いと思いますが、そういった状況は特別なプロジェクトとは関係なく、どこの部署でも起き得ることです。
実際のところ、惰性で“プロジェクト”を冠してしまう場合もあるし、どの部署の責任権限かを明確にしづらいからとりあえずプロジェクトにして、予算の付け替えなどでなんとかやり過ごし、チームを不安定な立場に据え置いている実例も多い、というのが私の実感です。
本来は、戦略目的を尖鋭的に実施するために作られたチームのことをプロジェクトチームというのだと思います。
尖鋭的な活動に付随して起こる周辺の事柄は基幹組織に任せ、ただひたすら創設目的のために全精力を集中する役割で、行動の指針は常に明快であり、社内のしがらみから脱却した存在。
余計な雑音に気を紛らわさず、基幹組織にはマネのできないフットワークで、早々に目的を果たしたら成果を基幹システムに引き継いで解散する。
誕生から撤退までの行程はそんな感じではないでしょうか(理想は)。
ゆえに「いつまでに、どこまでの成果を達成し、撤退するか」が、最初からかなり明確になっていないとダラダラと存在し続けてしまいます。
プロジェクトチームの欠点は、正規のバックヤードを持たないことです。
速戦即決の軽装備で出発した部隊は兵站を持たないため、長期戦になると補給の困難さが祟って戦力を維持できなくなりますが、プロジェクトチームも同じことです。
このため、戦略的にチームを作って動かす場合には、使いどころと引き際を見定める高い能力が必須になります。手元資金の運用に似ていると考えればよいでしょう。
これを、経営陣のひとりとして行う役目こそ、【第5段階 プロデューサー】の腕の見せどころなのです。
5プロセスを振り返る
入社したての新人から、経営者の片腕と呼べる域に達するまでを、「部下育成の3ステージ5プロセス」と銘を打ち、段階を追って説明してきました。
各段階ごとの役割と、働き方の例を紹介しましたが、いかがだったでしょうか?
このような分類をした方もいると思います。
【 第 1 段 階 】ルーキー・・・役無し
【 第 2 段 階 】アシスタント・・・役無し
【第3段階(前)】スペシャリスト・・・主任
【第3段階(後)】サブリーダー・・・係長
【第4段階(前)】リーダー・・・課長
【第4段階(後)】マネージャー・・・部長
【 第 5 段 階 】プロデューサー・・・役員
自分はどの段階に属しているか?
実際に従事しているのはどの段階の働きか?
部下A、部下B、部下Cの組合せに、役割に応じた仕事を与え、適切に管理できているか?
能力や成長度合いを度外視した、安易なものになっていないだろうか?
これまで何となくの習慣で部下たちに割り振っていた役目は、果たして本当に滑らかな組織運営に繋がるものだっただろうか?
「出来ないこと・苦手なこと」ばかりさせられ、「得意なこと・目指すこと」をさせてもらえないストレスが、成長のために必要なタイミングはある。
だから、それが計算され、充分に納得させたうえで行われているのであれば良いのですが、ただの習慣による押しつけで行われているようなら問題です。
もしもそんな職場を作ってしまっていたら、うわべはともかく、人間関係は崩壊しているかもしれない。
あるいは、崩壊こそしていないが、感情の処理がキチンとされない組織(上下関係)が形成されている可能性がある。
ギクシャクする組織では、だいたい誰かが誰かを敬遠したり、嫌ったりするのが普通です。
弱者が、より弱い者を攻撃する悲惨な状態よりも、強者である上司を嫌っているほうが、まだ救いがある。
あなたの職場は、どんな状況でしょうか?
誰がどの段階にいて、その人は本来その場所に相応しいか、切り分け出来ますか?
結局、部下というものは、どこまで育てる必要があるか?
無意識に演じている『職場の登場人物』たちですが、意図的に分類してみると、それぞれ5プロセスのどれかの役割を持っていると感じられないでしょうか。
いくつかの配役が混在している人がいたり、「ウチには社員が10人いるけど全員アシスタントだ」という職場があるかもしれません。
それから「プロデューサー」に相当する社員がいないところも多いかもしれません。
たしかに、プロデューサーの多くは経営者自身が兼ねていると思います。
もしも経営者以外にこのキャストがいるなら、片腕として立派に働いてくれるでしょう。
ただし、起業スキルも高いはずなので独立してしまう可能性があります。
長く勤めてもらいたいなら、早めに「勤めていく中で、何を目指すのか」といった自己実現について、よく話し合っておくべきでしょう。
トップを望まないタイプも多いので、ナンバーツーの「番頭さん」であり続けてくれる人材はいるはずです。
とはいえ、ビジネスのライフサイクルが短くなったこんにちでは、番頭さんも事業の改廃など目まぐるしい情勢に巻き込まれ、ときには社長の座に就かねばならないこともあり得ます。
そういったことを受け入れて、ひとりの経営者の下に居続けてくれるかどうか、最終的には「縁」であるとも言えます。
家族経営による「家業」に始まり
「企業」になって大勢の他人を受け入れますが
時が経つとやはり、血のつながりとは違った意味の
「縁者」で切り回していくものなのでしょう。
上場企業なら事情は違うかもしれませんが、中小規模の会社ではそういった「縁者」のうち、たった一人でもこの「創造性」レベルまで育て上げれば、社会に十分貢献したと言えるのではないでしょうか。
以上、戦略と戦術を底流に、成長のための評価基準を、「成長の3ステージ5プロセス」という形で表し、人材の評価・育成面のことを語ってきました。
評価基準と言いましたが、いずれも概念的です。冒頭で述べた給与の話とはまだ結びついていません。
そこで最後にこの点を掘り下げていこうと思うのですが、その前に一点、お知らせしておかなければならないことがあります。
3ステージ5プロセスで語ってきた内容は、『甘い』のです。
「理屈ではこうなる」ということであって、ある程度のモノサシにはなっても「期待値」に過ぎません。
理論だけで成立するほど、実務の現場は甘くない
部下育成の3ステージ5プロセスでは、各段階に「ミッション」「期待値」「利得」「昇格へのポイント」「伸び悩みの要因」といった、いわば「部下と一緒に見るキャリア設計プラン」を並べました。一見、ちょっとした資料風に見えるよう整えてみたつもりではあります。
しかしこれは、順調に「0」から「1」へ成長する人材だった場合のプロセスですので、プラス方向にしか解釈していません。
それだけで事足りる職場は、世間に一体どれくらいあるでしょうか?
負(-)がついた値を持つメンバーも、相当数いるはずです。
しかし、集団に混ざると他のメンバーの正(+)の値を吸収する余地があるので、チーム全体がマイナスの存在になるようなことはほぼ無いでしょう。
とはいえ、チームの絶対値を下げてしまうので、その分生産性は下がります。
会社には何人もの人がいて、個性は様々です。そういった「チームのマイナス要因となるメンバー」も、時にはいたっておかしくありません。
しかし、
ベクトルはプラス方向だが伸び悩みで「1」に達しない人
と、
マイナス方向の力を発してしまう人
は、明らかに質が違う。
戦術担当時代の教育が最重要。 教えるのは「作業手順」だけじゃない
「伸び悩む部下」と「他人を足止めする部下」が、結局は仕事ぶりが似ているからという理由だけで同じ評価・指導をしていると、後々マズいことになります。
なぜなら、以下のような常識があるからです。
・戦術ステージは、経験や知識の量でその実力が決定する世界ゆえ、働きが今ひとつだからといって下の段階に落ちることはない
・経験値は常に加点の対象である
出発点である「ルーキー」からの降格がないのは当然ですが、第2段階の「アシスタント」にしても第3段階の「スペシャリスト」にしても、皆やっていることは”作業”です。
とにかく経験知がモノをいう世界なので、くすぶっていて上に行けないとしても、現場のルールを煩雑にし、上司がヘタに手を出せないくらい複雑なオペレーションで固めながら強力な存在になってしまうことがあり得る。
マイナスをまき散らすから昇格させたくはないのに、経験の強みだけで力をつけてしまうタイプも少なからずいますし、皆さんの周りにも結構このタイプがいるのではないでしょうか。(腫れ物に触るように接しないといけないベテランさんとか)
また、4階(サブリーダー)以降の段階で抱える問題の中にも、実はこの段階での措置が適切でなかった時限爆弾みたいなものが、かなり含まれているはずです。
このことに触れずに、夢のある美しいストーリーだけを描いてもリアリティがないので、負の要素についても記述しました。
