本論に入る前に、「知識」と「知性」の意味について少しだけ解説します。
英語にすると知識はknowledge、知性はintellectです。
「知識」はともかく「知性」は解釈が分かれそうですが、企業内での評価育成用に意味づけするなら「知識は道具」、「知性は道具の使い方」と考えると良さそうです。
第1段階「経験」→知識を得ていくこと(習得)
第2段階「経験知識」→知識を扱うための訓練をすること(習熟)
第3段階「経験知性」→知識を使いこなすこと(応用)
道具を得、扱い方を知り、そしてついに実践的に活用していく段階へ進んで来ました。
所属ステージ [S] ~ [SS] 活動領域 [戦術50%] [仕組50%]
配役:スペシャリストまたはサブリーダー
ミッション ⇒ 「『作業』から『業務』へ進化せよ」、「業務遂行のルールを作れ」
第2段階までで、自分の作業を素早く正確に行う工夫をある程度極めたら、もう少し視野を広げることの重要性を認識しましょう。
これまでは自分の作業を仕上げたら上司に渡したり、特定の場所に保存して完了する内容がほとんどでした。
しかし会社は複数の部署の働きで、多種類の業務を行っています。
直属上司をはじめ、直接関わっているメンバーとの関係だけでなく、他部署との協力や駆け引きの現場に出、そこで決めた結果を了解してもらうよう、今度は上司を説得する場面にも立たされます。
尽くすタイプの人は、往々にして相手を理解してあげることが得意で、自分の意見を突き付けて相手を従わせたり、交渉して考えを変えさせることは苦手です。
しかし経験知性の段階に入ると、日頃言うことを聞いてサポートしている先輩や上司に対し、その苦手なことをしなければなりません。
前の記事で例に挙げたフィクサー願望を持つタイプの人は、これを越えられなかったと考えられます。
しかし、家の中でのお手伝いでは「お駄賃」しかもらえません。
仲間たちとの慣れ合いの関係では、得られる価値も高くはならないのです。
外に出て他者との関係性の中で働くことで「給料」はもらえます。
Contents
スペシャリストは、隣り合う他の仕事にも理解がある
直接の担当ではない業務についてもある程度の知識を持ち、手助けができるかわりに、こちらの手助けも頼める関係を築けるようになると、活躍規模が拡大して多くのことにタッチできます。
このことにより、今の業務より適している仕事や、魅力を感じる他部署の存在にも気づけるようになります。
いずれそこへ異動したいと思えば、今からどんなことを身に付けておくのが良いか教えてもらったり、こっそり手伝わせてもらうことも可能です。
社内での活動領域を広げて、自分の身の振り方にも有利に作用するような条件を得るには、単なるライン上の「作業」から、社業を担う「業務」のレベルに昇華させていくことが重要になります。
『仕組』の領域に踏み込める「サブリーダー」
段階2(アシスタント/経験知識)までに培った個別作業の実力に加え、段階3の前半(スペシャリスト/経験知性)で広い視野を手に入れると段階3の後半へ突入します。
役名は「サブリーダー」に格上げされます。
戦術を卒業し、いよいよ「仕組」のステージに昇格しました。
この時点で
「もしも入社後(あるいは異動後)もっと早くにこのレベルで仕事ができていれば、どれだけ先輩・上司に負担をかけずに済んだろうか?」
と考える人もいるでしょう。
つまり、現在の「ルーキー」や「アシスタント」にこのノウハウを伝授すれば、ムダなエスカレーションに煩わされる手間を減らし、部署の生産性は上がる……と。
「マニュアル」というものが、こういった動機と主旨で作られ、適切に運用されるならば、新人にも中堅社員にも、そして会社にとっても大きな財産になります。
歴戦の強者が幾多の経験から培ったスキルの開放
それがこの段階に足を踏み入れた人の最重要課題です
これまでとは違い、自分が動くときの速度と精度ではなく、他人にさせた時のそれを実現させることが、提供すべき付加価値になります。
戦略力が試されるポジション「サブリーダー」
自分の作業だけに没頭してきた戦術家にとっては、慣れない頭の使い方ですから、新しい思考パターンを構築するために混乱する人もいます。
しかし、複数の人を動かす方法に取り組めるので、『企画』と『管理職』のシミュレーションが経験できる面白いポジションです。
この段階での成長を間違わなければ、将来の大きな飛躍に向けたチケットを手に入れられるでしょう。
これまで使っていたマニュアルに対しても、「記載内容の正しさ」より「使い勝手(ユーザビリティ)」に目が開くようになります。
「新人が理解しやすい表現方法が使われているか?」
とか
「忙しい現場で、見たい部分がすぐに開けるか?」
といった見方で見直されると、マニュアルは進化します。
「作業量の多さ」と「作業種別の多さ」の違いに戸惑う
戦術を担当するスペシャリスト以下のメンバーに対する実務指導、エスカレーション案件への対応などに加え、トレンドに応じたマニュアルの差し替えまで、このポジションは戦術時代より作業量は減るものの、決して楽な仕事ではありません。
おまけに、業務手順を皆が理解しやすいように文章化又は図表化するためには、他人の気持ちを汲む能力や、TPOに合わせた伝え方の技術が必要とされるわけですから、この段階を全うした人の能力というのは年次で押し上がった肩書だけの管理職とは次元が違ってくるわけです。
成長速度に格段の差がつくのは、実は戦術家時代よりここから後の段階になりますので、評価基準を従来のまま据え置くと、優秀な人ほど心の奥底にしこりを抱えることになるでしょう。
業務の効率化や質の向上を、一個人→集団規模に拡大できる人は、組織への貢献度合いは「足し算」→「掛け算」になるので、評価の仕方もそれに応じて拡大しないとフェアじゃなくなるからです。
中堅社員が別の業務に異動する事情
歴戦の強者の力は、専門分野で存分に発揮させるのが一番ですが、ある部署でサブリーダーやスペシャリストをしている人が、異動で別部署のサブリーダーやスペシャリストに転属することがあります。
慣れ親しんだ業務から引き離し、長所をスポイルしてまで転属させる理由には、以下のようなものがあります。
(2)伸び悩むスペシャリストの視野を広げるための修行
双方とも期待値の表れですが、(1)は既に高い評価を得ている人材の転用で、目的は「部署へのテコ入れ」です。
(2)は、サブリーダーに昇格させたいが、あと一歩が足りない人材へのチャンス提供、または現在の業務に適性が低い場合の転属です。
このほか、本人希望による配置換えもあります。
部署を補強する「サブリーダーの異動」
まずは(1)『サブリーダー → 別部署のサブリーダー』についてです。
サブリーダーは第3段階後半の「仕組」ステージにポジショニングされています。
スペシャリスト時代に、他部署との接触を多く経験している存在ですので、新任部署のことはある程度知っていますが、実務における絶対的な経験値は不足しています。
作業する能力だけだと格下のスペシャリストどころか、その下のアシスタントにさえ及ばないこともある。
しかし、だからこそ新鮮な発想ができる人物として、上層部が伸び悩む別の部署を活性化するための「使者」として、あえて不慣れな分野へ送り込むことがあります。
弱点克服を後押しする「スペシャリストの異動」
次に(2)『スペシャリスト → 別部署のスペシャリスト』についてです。
今の業務よりも適していそうな部署があるとします。
その場合、自薦他薦で異動するのはよくあることです。
また、能力は高いが他部署との交流が苦手で自分の殻に閉じこもり、昇進の機会を逃している人もいます。
こういうのは性格的な問題もあり、本人の力だけでは解決しないことが多いので、業務環境を変え、新たな人間関係の形成を促して伸び悩み解消の機会を与えます。
これは当然ストレスを生みますが、ずっと伸び悩みんだままでくすぶらせるより、建設的な手法といえるでしょう。
とは言っても性格に根差す問題の場合は慎重に実行すべきで、本人のキャリアと今後の志望についてのディスカッションを充分に行ったうえで実施することが肝要です。
