第4幕:オールマイティなスペシャリスト

さて、会計スペシャリストのメッキをかぶっていた当時の私に話を戻します。

メッキのおかげで雑用係からは免れていますが、小さな会社では必然的に何でも屋になります。

特に私の役目は『業務の体制づくり』ですから、事務をやりに来たとは言いつつ、他社へ商談に出向くこともあります。

最初にも書きましたが、クライアントの親会社は有名企業です。
その後ろ盾で活動していることもあり、取引相手は大企業が多い。

一方、自分たちが執務しているのは、元々は倉庫室。

(こんなところで働いてることを)

あたかも取り調べ室のような所から、相手企業の大きくて綺麗なオフィスへ行くので、自社のみすぼらしさが一層強く感じられます(愛着が感じられれば問題ないのですが…)。

(こういう取引先に行くと強く感じる)

このあたりが弱小企業の苦しい現実です。
「人は見た目じゃない」のフレーズはよく耳にしますが「会社は見た目じゃない」は聞いたことがありません。

見映えの良し悪しは、面接や説明会に訪れた求職者の第一印象に響く。

派遣社員が早々に辞めてしまう理由のひとつには、職場の体裁の悪さもあったでしょう。

相変わらず離職率は高く、現状のまま派遣会社の人材を定着させることに限界を感じてきました。

部長さんが面接するのですが、業務説明で良いことを言いすぎる傾向があり、社員たちは入社後のギャップに打ちのめされます。

複雑でミスしやすいため集中力が要るというのに電話対応が多く、それもクレームや催促の比率が高い。そしてその数は日に日に増えていく…。

社員さんたちのフォローも充分とは言えないし、そうなると勤め続けることに、不安や不満を抱く。
別の条件を提示されれば辞めてしまうのも当然でしょう。

(『人材派遣の○○』営業担当です。
早速ですが、御社に対する人材紹介は
非常に消極的なものになりますので
その点ご承知おきください)

派遣会社の営業担当の方からは、離職率が高くて質の良くないクライアントと評価されます(はっきりそう言われたこともあります)。

やはり、人材の流動化がそう簡単にストップするとは思えません。

(いっそ、ウチの事務所から追加で派遣スタッフを採用したらどうか。他所より単価は高いが、独立を目指す連中だから一般の派遣スタッフよりも融通が利く)

とうとう私自身が人材確保に乗り出すべく、クライアントに働きかけました。

何でも屋だった私は派遣社員の採用面接にも関わっていたので、スタッフの採用計画に口を出すのはそう不自然なことでもありません。

着任から3か月程度の外部スタッフがそこまでの立場になれるのは、経験者にはおわかりでしょうが、ベンチャーならではの特徴ですね。

私の目論見は成功しました。
新たな仲間たちの踏ん張りが功を奏し、人材の流動化は止まりました。

この会社のこの場合は、小隊リーダーが強いことが、各チームに安心感と団結をもたらしました。

(職場内に『目指すべき憧れの存在』を準備できるか?)

(厄介な電話に困っているスタッフに)
「大丈夫? 代わろうか?」
(行きづまって頭を抱えたスタッフに)
「わかった。この話はこっちで引き取るからもう大丈夫だよ」

チーフ職とはいえ、さして年齢も変わらない女子と、気さくで明るいお兄さんが、いざとなれば助けてくれる、という雰囲気が生まれました。

こんなに良くしてくれる人には、出来るだけ負担をかけたくない。自分ももう少し頑張ろう。
一般スタッフたちが、自然とそう思ってくれるような、良い仲間たちでした。

おかげで私もより一層、事業運営の深いところへ踏み込めるようになりました。
ここまでくると、さすがに経理経験の有無などは一切不問で、むしろメッキの下の地金に価値を認められるようになっていました。

システム会社のエンジニアからは、基幹システムサーバの更新権限を提供されただけでなく、業務用の追加機能を、保守料金の範囲内で次々に作ってもくれました。

また、新入社員の研修講師、清算寸前からの立て直しプラン企画、外部コンサルと共同したサーベイランスなど、はたから見ると華々しい活躍の機会を得ました。

『Access活用による業務改善』をうたい文句に入り込んでから、約1年の間のことです。
私の就業契約期間の最終月、クライアントはとうとう黒字に転換しました。

別に狙ったわけでもなく『乱世の終焉』と共に、私はそこを去ることになりました。

サラリーマン志望で転籍希望だった私の願いを、所属事務所の所長が叶えてくれたための契約終了でした。

初の民間企業体験の中から、データベースにこだわったエピソードをお話ししました。 具体的にDBを使った描写はほとんどありませんが、逆に、...

【データベースのトリセツ 目次】

<部下が手ごわくて困る上司>

 戦場に立とう、部下と共に

引き算で不利条件をつぶせ

BIツール権限を与えるな

パワーユーザーとは

「戦略的パワーユーザー」一覧

<部下が役立たずで困る上司>

部下扱いのセンスは学歴不問

なぜあなたの部下は、要領の悪い質問をしてくるのか?

部下の教育が「とにかく結果を出せ!」だけだった場合

システム化が、上司が嫌われる原因を生み出す

<部下とわかり合いたい上司>

DB活用は文系センス

社内カウンセラーになるためのデータベース活用術

部下の『行動記録』は、上司にわかってほしい『感情記録』

部下のデータを読む訓練のコツ

<部下が型破りで戸惑う上司>

「即戦力」は歯車ってことか?

第1幕:会計事務所からやってきた、会計を知らないスペシャリスト

第2幕:乱世に乗じるスペシャリスト

第3幕:経営者に感情移入するスペシャリスト

第4幕:オールマイティなスペシャリスト

第5幕:殻を破れ!スペシャリスト

<部下の戦略性に戸惑う上司>

ストラテジック・パワーユーザー ~ 戦略家で、且つ戦闘の達人

第1回 まずは定義しないと

第2回 IT技術者じゃなく『ユーザー』だから経験できるダメな感じ

第3回 データベースでホワイト企業を作るなら

第4回 戦略的パワーユーザーは『DBで組織を造る者』

第5回 ストラテジック・パワーユーザー

<悩む上司への1つの処方箋>

パーティーメンバーを魅了する組織理論

給与制度を使うワザ

部下の成長カーブ

評価力は上司力

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