参謀、指揮官が最初に学んだ『総説』

私が思うに、参謀職というのは非常に地味な役回りで、知恵を絞り尽くした結論を、さらに簡潔な命令文章にするために頭脳に負荷をかけ、実戦行動に移った後は他人の手柄になるにもかかわらず、失敗した場合は自身がその責任を感じざるを得ない厳しい任務ですが、秋山真之が作戦を考えるときは、こういったことを緻密に無駄なくやっていたのではなかったかと思います。

戦争で作戦が失敗した場合、戦略目的の達成に弊害をもたらすことはもちろんですが、それにより多くの味方の人命が失われます(秋山真之は敵の人命のことも気に病んでいたようですが)。

人命がかかる数少ない実戦の機会に遭遇したとき、参謀は「計画立案」、指揮官は「実施部隊の統率」を、できる限り平常心で行うために普段から考え、心がけておかねばならないことを、学究の形で示したのが海軍大学校で講義された、『秋山真之戦術論集』の内容だと思います。

戦闘行為が行われる場所や天候や時間帯などの環境や、彼我の物量やそのスペック、また兵員の性格や能力、そして戦況の移り変わりなど、「実戦」にはあまりにも多くの要素が複雑に絡み合っています。

判定員がいるわけではないので、戦闘終了の時期や勝敗結果については、敵味方の様子から自己判断しなければなりません。

それゆえ、戦闘開始から終了に至るまですべてが手探りで、自身が生きている限り、戦闘中は常に錯雑した種々雑多な事象の只中にいることになります。

そんな中、戦術担当の兵員は、自分の行為の結果が勝利につながると信じて、受けた命令をひたすら繰り返すことに集中できますが、命令を出す側にはより大きな役割が課せられます。

秋山真之が講義した海軍大学校の生徒とは、参謀や指揮官など、命令を出す側の士官だということを、最初にお断りしておきます。

現代のビジネスで例えると、コールセンターのオペレーターや、バックオフィスの入力オペレーターなどの外注作業員ではなく、少なくとも彼らを指揮するスーパーバイザー以上の役職向けとでもいえばよいでしょうか。

戦場で実際に動くのは兵隊たちだが、組織力を最大に発揮させるために学ぶべきは士官たちだという認識で、陸軍士官学校や海軍大学校が作られたのでしょう。

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