密やかな協力者~ランダムのネスト編42

「どうするつもりなのか」

M川がしたA氏への質問は、チームメンバー全員のものでもあった。
東京事業部長のB氏から散々に扱われ、悔し涙にむせんだ者もいる。

無理難題を押し付けられ、しなくてよい残業を余儀なくされて大事な時間を失ったり、揚げ足取りを警戒して緊張のし通しだったり、とにかく全員が憤りをおぼえ、現状の打破を心待ちにしているのだ。

子供っぽい欲求が満たされるのは、A氏が完膚なきまでにB氏をやり込め、強者の座から引き下ろすのを見たときだろう。
しかし皆、いい年の大人たちである。そこまでは望んでいない。

だが、やはりこのまま泣き寝入りすることだけは許せない。
それほど強い感情が渦巻いている。

もしも今の頑張りを手放し、業績を上げられないダメ部隊として無様な姿をさらすようになれば、己の地位を脅かされなくなったB氏の態度は変わるだろう。
しかし、部下たちを守るためだからといってそんなことをしたら、今度は部下たちを腐らせるだけだ。

(逃げるんじゃない。戦うんだ……いや、そうじゃない。戦って、勝つんだ)
しかし、どうればいい?

その思いが、つい言葉に出てしまった。

「オレたちは逃げるんじゃない。戦って…そして勝つんだ」
小さな声でボソッと言っただけだった。
しかしそれは、心の奥底の発露であり、その場にいる全員の心の奥底に響くものだった。

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