密やかな協力者~ランダムのネスト編37

「M川、このプログラムって『いじれる』のか?」
安藤が恐る恐る訊ねる。

何をどう『いじる』のか、全くプランはないようだが、とにかく安藤が口火を切った。

「作った本人なら、何か修正とか……さ」
「それはマズいだろ。全社これで動いてるんだから。そんなのすぐバレるって」
吉井が安藤の提案を打ち消した。
安藤も気まずそうだ。M川が背負うリスクがあまりにも大きすぎる。

「今からじゃ、全体に影響するような根本的な修正はできない」
そう言って、M川は苦い顔をした。

「どうかしたのか?」
A氏はM川の表情が気になって訊ねる。

「Bさんはその『根本的な修正』を、オレにさせようとしてるんですよ。でも必要ないんですよ」
大掛かりな修正が為されるなら、それを機に改良を、と一瞬色めき立ったメンバーたちが、最後の『必要ない』に失望とも戸惑いとも言えない表情を見せた。

A氏ももちろんその一人だ。

「修正が必要だと、Bさんが言うのはどうしてなんだ?」
珍しくB氏に同調したい気持ちがある。

ここにいる全員と同じく、B氏も営業畑だ。彼がパソコン技術に堪能だという話はまったく聞かないし、会議でのたどたどしいキータッチを見ればそれはよくわかる。

(きっと、パソコンに疎い人間ほど、M川の意見を無視して無理させたくなる状態に陥るのだろうな)

M川は、自分はシロウトレベルだと謙遜したが、決してそうではあるまい。

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