密やかな協力者~ランダムのネスト編35

A氏のチームは創立以来初のタイプの事業で、完全に異端児だったし、そもそも企画部が点数稼ぎのために打ち出した計画だったため、実行段階に入ってからは冷淡な扱いだった。

心もとないバックアップで成果を挙げていくためには、少ない資源を高利回りで運用する必要がある。

創意工夫、進取の気性、広い視野、深い探求、根気……。

それら、人が持つ良い特性を引き出すチームのパスは、

想像力、共感性、受容、信頼、相互理解と関係維持……。

明治期の海軍にいたという名参謀・秋山真之は、『戦闘力は機力×術力』と表現したそうだが、A氏のプロジェクトは冷淡に扱われたため“機力”は乏しかった。
予算は絞られ、必要な機材や役務の調達もままならない。

しかし、チームひとり一人が仲間たちとの連携の中で常に思考し、学び続けるスタイルが定常化したため“術力”が驚異的に増大した。

被乗数である機力がゼロでないかぎり、ひときわ大きい乗数を持つA氏のチームは、少しでもインフラが改善すると爆発的な躍進が見られたのだ。

社内でこれに匹敵する実力を持つ部署は存在しない。

有り余る機力にあぐらをかき、内在する自身の能力を錆び付かせる習慣に溺れた者が集う組織ばかりの中、それらには持ちようも無い躍動感が、A氏のチームメンバーには宿っている。

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