密やかな協力者~ランダムのネスト編34

A氏はM川にフリースペースのテーブルを促した。
安藤や吉井はもちろん、この時刻まで居残っていた他のメンバーたちも、チームの一大事とばかりに集まってきた。

入り口近くで見張りの任に就いてくれた二人を除き、全員がテーブルを囲んだため、ちょっとしたチーム会議の装いとなった。

安藤が改めて入口に陣取ったメンバーに目顔で話しかけると、手ぶりでOKサインが返ってくる。
即座に安藤と吉井が親指を立てたグッドサインを返し、ニッと笑う。

連携の良さに定評のあるこの二人が部下についてくれたのは、A氏にとって実にありがたかった。
言葉だけでなく、こんなちょっとした動作もこまめに行い、メンバーとの間に隙間を作らない。

全員が離れた場所に固まったことで、取り残された位置に残る入口の二人とすかさず合図を送り合い、気にかけていることをわかり易くアピールしてやったのだ。

他のメンバーもそれにつられ、額に手をかざしてキョロキョロする素振りを示して見せたり、両手でガッツポーズを作ったりして、入口の二人にエールを送る者がいた。

M川が、うらやましそうにその様子を見ている。

(そうか。東京事業部に無いものが、ここにはふんだんにあったな)

A氏は、今初めてそのことに気づいたような気がした。

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