密やかな協力者~ランダムのネスト編21

東京事業部の部屋を訪れ、結局誰とも会話をせず、廊下を歩きだしたA氏は、後ろから呼び止められた。

普段は視界に入らない(B氏との論争ばかりしているからだが)が、プロジェクト関連事務を担当してくれている東京事業部メンバーのひとりだ。

つまりB氏の直属部下である。
たしか名はM川という。
今まで話をしたことはない。

(そんな男が、一体なんだ?)
A氏はいぶかしむ。

大体、部屋を出てすぐの自分を呼び止めたということは、自席から追いかけるように部屋を出たことになるはずだ。
上司であるB氏の目が光っているのではないか?

しかし、A氏の記憶の中に、このM川の名がハッキリと残っていた理由を思い出した。

A氏が売上計上をする際、B氏に強要された全社共通の統一方式では困難であり、独自集計が必須ということは前に述べたとおりだ。

メンバー全員が営業系のため、この自前の独自集計には皆等しく手を焼いている。

A氏のプロジェクト専任の事務員もいるのだが、それはB氏率いる東京事業部に籍がある。
つまり、決して頼れないB氏の直属部下なのだ。

そんな中、A氏の部下の中に、このM川の力を借りているメンバーがいた

彼がよく「M川に訊いてみます」とか「これM川に教わったやり方なんです」などと話しているのを聞いていたのだが、A氏が彼に面と向かったのは今日が始めてだ。

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