密やかな協力者~ランダムのネスト編10

従来からの方法を繰り返すことで恩恵を受けられる各地の事業所長とは違い、A氏のプロジェクトは窮地に追い込まれた。

むろん、「プロジェクト」と称する動きは、社内でこれまで何度も行われてきた。

だがそれらはいずれも既存事業の延長にほかならず、目先が変わった程度の内容といえたので、売上計上などの事務作業の組み方も既存組織と同じで問題なかった。

当然のことだが、それらの実績を元に東京事業部が作る次期予算計画のたたき台も、提供されたものを流用すれば充分に事が足りた。

しかしA氏のプロジェクトチームでは、そう上手くはいかない。
彼が担当するプロジェクト内容は、「株式会社 四緑」で初の試みとなる事業だった。

マイナーチェンジなら通用する既存体制の流用が、フルモデルチェンジには適合しないのである。

これまでのやり方を押し付けられても、その中にA氏が使える要素は断片的にしか存在しない。
日常業務に関することもそうだし、このような年1回の特殊業務もまた同じである。

それでも、売上計上などの平準的な作業は、プロジェクトメンバー全員が過重負荷を受け入れることでかろうじて対応できたが、次期事業計画に関する作業への対応策までは、手が回らなかった。

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