システム化が、上司が嫌われる原因を生み出す

さてここで、上手なデータ活用に不可欠な3つの質問をします。

1.グラフ作成はさほど高い技術を要しませんが、それよりも遥かに複雑で、長期間使い続ける基幹システム導入を任せられる部下は誰ですか?
2.その部下は誰よりも御社の生データ(感情込みの行動記録)に接することになりますが、あなたに近い感性でそれを捉え、あなたの意思決定をサポートできそうですか?
3.システム製作があなたの構想どおりに進まないとき、感性の違いを指摘し、あなたの思うように軌道修正できそうですか?

これらの問いすべてにYESと答えられるなら、システム導入すれば組織は格段に強くなるだけでなく、その導入費用が信じられないほど安価になるでしょう。

また、出来上がってからの機能拡張要求が多い基幹システムですが、3つの質問にYESと答えられるなら、そのコストもさほどかからないはずです。

もっともこれは理想論であって、実際のところ99パーセント以上の組織には不可能ではないかと思います。

その理由は、小規模企業のシステム導入は、現場がパンク状態になってから決定するのが一般的だからです。
準備の時間なんて悠長に取ってられないのが普通です。

基幹システムは、せんじ詰めればデータの入れ物、行動記録のるつぼです。
サーバなどの機材はともかく中身のほうはというと、これまでの知恵やノウハウを、熊手で一か所に掃き寄せたような、あいまいな形で存在しています。

会話や思いつきの中から工夫が生まれ、オペレーションの変更を繰り返してきた日常の延長としてスキルやノウハウというものがあります。

これらはもともと、無形で自由度が高い。

だから、システムの導入をきっかけに、さらなる思いつきが生まれることが非常に多い。

当然、納品されてからの機能追加や修正リクエストが頻発します。

しかしそれは、コストを伴ってしまう。
「なぜ、わかっているなら作る前に言わないのだ!」

違います。作って動かしてみたからわかったことなのです。
しかし、時すでに遅し。

システム化によって、それまで自然に為されていた日常的な業務改善が制限される。
発案が蹴られるようになった現場では、新たな工夫のシステム化は、諦めざるを得ません。

しかし、改善案を実行しないと自分たちが困るので、仕方なく現場だけで通用するローカルルールと、手元管理用のExcelファイルなどが作られ、運用に供されます。

経営陣からは現場に対し、しきりに情報共有が叫ばれますが、基幹システムがガッチリと硬直化させているので、現場は追い詰められるだけです。

『情報共有用の資料』とかを作らされる羽目に陥り、ムダな作業を増やされ、おまけに作った資料をつつき回されるようでは、反感を抱く部下を増やすだけです。

こういった状況に陥る前に、データベースをコミュニケーション用のツールとして、部下たちと理解し合う関係を作っておくことが、開発段階の見落としを防ぐ意味でも大変重要。カットオーバー後のコミュニケーションでも硬派を発揮します。

現時点で部下が持つ経験やスキル、それを得るまでの苦労や喜びと今後の想いを、文字や数値で表すことができ、対話の目録となるのが、データベースの隠れた役割です。

人が最も関心を持つのは、自分自身のこと。遠くの大事件より、自分の歯痛です。
全社員向けの社長訓示を聞かされるより、自分の行動記録について上司と語らうほうが、よほど身を入れて話を聞き、思いを口にすることでしょう。

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