パワーユーザーとは

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この言葉に出会ったのは2010年の春ごろ。BIツールの記事でも書きましたが、当時の勤め先の基幹システム入れ替えの頃です。システム会社のエンジニアから聞きました。

パワーユーザーとは一般的に、パソコンに詳しいユーザーということらしい。

パソコンを自作可能など「ハード面に強い人」とか、特定のアプリケーションに精通しているなど「ソフト面に強い人」を指すようです。

上記2タイプ以外にもう1つ定義があるらしく、「ハード面」「ソフト面」といった区別なしに、実務効率化のためにパソコンを使い倒す一般ユーザーというのもパワーユーザーだということでした。

この最後の定義は、そのエンジニアが私を指して言ったものです。

つまり、別にシステム担当とかじゃないけれど、欲しいデータを基幹システムから引っ張り出す術を持っているとか、簡易なシステムならプログラミングできるような人のことです。

しかし当時の私はプログラムなど全く書けなかったので、簡易システムはシステム室に頼んで作ってもらったものです。ハード面でも、パソコン設定などは大の苦手です。

ということは、専門家からパワーユーザーと誤解されるほど精通していません。
しかし、エンジニアとの良好な関係性を築き、ニーズを的確に伝えられるならば、それも立派なIT技術だと思うのですがいかがでしょうか。

私が理想とする素人のIT技術とは「システムが希望どおりに動くよう、エンジニアに要求できる技術」です。

一般ユーザーが持つ事業ラインの実務能力と、ITエンジニアの技術能力をアセンブリする能力といえますが、パワーユーザーはこのアセンブリにとても近い存在のように思っています。

しかし、一般的にパワーユーザーという人種は、その能力を理解されづらいのが最大の特徴です。
パワーユーザー本人ですら、自分の立ち位置を正確に捉えている人はまずいません。

一般的には、ほとんどが次のようなケースになっていると思うので、実例をひとつお話します。

●パワーユーザーは、組織の危険人物

かつて会計事務所にいた頃、別クライアントで働く同僚から近況を聞きました。
「エクセルファイル30個を連携させる管理会計業務」を社員から引き継いだそうです。

開くファイルの順番を間違えただけでデータが壊れるという、やっかいな構造だったそうですが、敵が強いほど燃えるというファイト溢れるヤツだったので、やがてはその複雑さを克服し、さらに工夫を重ねました。

その後、久しぶりに会って話を聞くと、連携ファイル数を減らしてスリム化したかと思いきや、引き継いだ時の倍以上になったと言います。

彼の前任者は業務に精通したベテランでしたが、上司との折り合いが悪く、退職の理由もそこにあったようです。
後を継いだ彼には、一人に偏りすぎたノウハウの標準化/共有化も求められていたはずですが、真逆へ突っ走ったのでした・・。

彼は自信家で、コミュニケーションは積極的ですが多少のカドがあります。
そこに彼の面白さがあったのですが、どう感じるかは人それぞれです。
何かのきっかけで前任者のような役回りを演じてしまう危険性がないとは言えません。

どこの職場にも、頼れる実力者だが人付き合いに難があるタイプがいると思います。

その人がハイスキル業務を一人で担当していて、誰も口出しできないポジションに君臨していると、周りのメンバーは働きづらいと思います。

おまけに、そのスキルをさらにITスキルで二重に武装してしまったら、仮に業務スキルで頭を押さえることに成功しても、今度はプログラミングという厄介な聖域に逃げ込まれてしまいます。

システム化とは、人がやっていた作業をシンプルかつ共有可能にし、最後には機械化するものです。
ということは、システム開発とは、職場内で行われているコミュニケーションを機械化する側面もあります。

だから、人間関係で厄介な問題をはらんだ業務は、当然ですがシステム要件の定義がうまくいきません。
結局、厄介な人が死守している聖域には触らずに済ませることがあり、その部分のシステム化は失敗します。

箸にも棒にも掛からない、上司を困らせるパワーユーザーが発生し、聖域を作り始めると、属人化に拍車がかかり、そこまで進行すると立て直すのは容易ではありません。

これを防ぐには、早いうちからどこを仕組化するかを定め、コミュニケーションの機能化がスムーズに行える職場環境を整えなければなりません。

パワーユーザーというものは、できるだけ自然発生させず、上司が効果的に育成することが何よりも重要なのです。