青森県株式会社の【法人】鑑定を終えて<4>

これの繰り返しがパターン化するうちに、社員たちは「認められている安心感」に浸るようになります。
子供の成長過程で最も大事な親からのメッセージ「お前のことを心から愛しているよ。なぜなら、お前がお前であるからだ」が、常に社長から発されているからです。

決して「お前は○○をしてくれるからエライ」とか「お前は××を持っているからスゴイ」などとは言わないのです。
基本的に「評価」ではなく、「お前ってすごいな」という社長が受けた驚きを、そのまま伝える論調です。

青森社の社長から何となく連想してしまうことですが、古代中国の漢帝国を築いた劉邦は、自身の能力は高くないが、良い意味でそのことにあぐらをかいてしまう人だったようです。
部下の能力に嫉妬せず、細かく規則を作って束縛することもなく、嫌だと思う部下についても他人から諭されると、自分のその感情を抑えることができたといいます。

そういうトップが部下を擁して君臨し続けるうち、時間の作用で「ものが言いやすい上司」「行動責任(実行の決断)を負えばいい上司」そして、「行動の結果が失敗であっても結構許されてしまう上司」といった条件が独特な職場環境を醸成し、優秀な部下が育つだけでなく、他所からやってくるようにもなりました。

青森社の社長を漢帝国の初代皇帝になぞらえるのは、彼を誉めすぎかもしれませんが、似たタイプであることは確かなようです。
何せ彼は、ビジネスモデルを安易に組んだまま見直しもせず、膨張期のアドバイザーを間違え、店舗展開や広告などの追加投資では会社を傾ける規模で失敗し、常識はずれな人数を採用し、業績低迷に焦って上場話に乗りかけるなど、『優秀なビジネスマン』なら呆れかえってしまうような行動のオンパレードで、とても見ていられないようなダメダメぶりです。

劉邦も、宿敵の項羽との戦いでは、とことん負け続けます。
全軍崩壊レベルの敗戦や、陣を構えた項羽に恐れおののき、降伏しに出掛け、その席上で殺されかけて命からがら逃げかえってくるような情けない姿を何度も部下にさらけ出しますが、それでも優秀な部下たちが彼の傍らから去ることなく、結局それによって「最初で最後の1勝」を実現させ、項羽を降して歴史を作った名経営者です。

ダメダメ社長の一部始終を見ながらも、そここそが自分の働きやすい職場であると感じ、日常業務の延長で高い専門性を身につけ、結局それが商売にできるレベルになっていた。
これは、社員たちをそのようにしてしまう社長の手腕だったと考えれば、やはり青森社の社長は名経営者なのかもしれません。

こういうのを『人徳』というのでしょうね。
それに奢って感謝を忘れたりすると良くないですが、『徳』を『得』に置き換えて、「失わないように、感謝しておこう」などと、計算ずくでとか、義務で感謝するようでは、きっと『徳』は失われてしまうでしょう。
青森社の社長は、どうもそんな薄っぺらいタイプではないようです。どうみても「憎めないおバカさん」といった感じですが、それこそが、簡単にマネのできないこの人の才能であるように思えてなりません。

<おわり>

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