青森県株式会社の【法人】鑑定を終えて<3>

青森社は連年の好業績で社内留保がタンマリあったため、財務体質に余裕があったという点で、これもまたゲタを履いているのですが、以下のストーリーが展開しやすい状態にありました。

業績が下がってきた時に社長は、社員たちが醒めてしまうほど、会社が誕生してからの成長記を熱く語ります。
実は社長の不安の裏返しにすぎないのですが、「ただの強がりやごまかし」でないところが、結果的に吉と出たのでしょう。
強がりやごまかしは、構図でいえば、社長⇔社員という対立構造の中で発生しますが、共に苦難を乗り越えた物語はいわば、社会⇔オレたちと、共通の仮想敵と戦った実歴です。

そして、「熱く語るストーリー」の中で、社員ひとり一人が実名とともに、その活躍を描写されます。

「今、この業務がこの形になっているのは・・」、「大阪支社が全拠点で一番多くの営業マンを使いこなせている力の根源は・・」、「東京支社が本社のサポートまでを迅速にやり遂げられるようになったワケは・・」など、何かの成り立ちの一つひとつは、「誰それはこういうヤツで、コイツのこの働きがあったからだとオレは思っているんだ」と、社員たちの前で繰り返し語り続けるのです。
おそらくその分析も甘かったように思えますが、社長がそう考えている以上、社長の話の中ではそれが真実なのです。

非難や叱責なら、事実と違えば言い訳したくなりますが、自分に感謝して褒めてくれている相手をさえぎってまで話の腰を折れる社員は多くないでしょう。もともと、青森社に採用された社員は、フランクな社長の意思に合った人達ですから、多少の歪曲は気に留めない性格を備えています。

トップが自分の能力や働きを、他のメンバーたちに感激感動の想いと共に語ってくれるので、照れくさくもあり、呆れながら聞いているうちに、筋立てや順番が社員たちの記憶にも残るようになってきます。
そのうち、社長のトークを聞きながら「ここでそろそろ俺の出番だ」などと、うっすら期待するようにさえなります。
歌舞伎の舞台なら、掛け声をかける瞬間を狙って身構えるようなものでしょう。

ちなみに、小説の中でも描写しましたが、『社長の話は、年々ドラマチックになっている』というのは、社長にとっては偶然の産物でしょうが、これは社員たちの心に刺さるポイントです。
同じフレーズの繰り返しではなく、表現方法や、時折別のエピソードが加わることでスケールアップしてきます。
マンネリ化を防ぎ、「次はどうなるんだろう? 俺の活躍は」と、連続ドラマで次回の話が気になって、次の週を楽しみにしてしまう心理も働きます。

この場合、「次回の話」というのは『次週』ではなく、『次に社長が語ってくれる日』となります。
結構長いスパンで、楽しみにしてくれるようになります。
その間には、やたら忙しい日や、クレームを受ける日や、体調の優れない日など、様々なバイオリズムが訪れますが、ハマっている連続ドラマ(自分自身が登場するので非常に関心の高い)を楽しみに待つという底流がずっと存在します。

言葉を変えれば、社長という語り部に、会社の楽しさを見出しています。
自分を認めて称賛してくれるトップに、引き込まれています。それは、自己愛による部分も当然ありますが、いずれにせよ「ウチの社長は面白い」と家族や友人に話します。

<つづく>

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