戦略的パワーユーザー<2>地味なリアリティ(1)

大人になってしまうと、体面を気にして大っぴらに言えないことって、色々あると思います。
「いい年齢して何言ってるんだ」と思われてしまうこととか、男性の場合は「かわいい」なんて言われたら照れくさくなることなんかも、人前では言いづらかったりします。

「特撮ヒーローが好き」というのも、やはり大人になってからは言いづらいことのひとつだと思います。
子供向けの番組だから、それを好きになる大人は幼稚という解釈が根底にあるのでしょうか。どうも特撮好きは一般的な大人の世界では旗色が良くないようです。

かくいう私は、一時期の「平成仮面ライダーシリーズ」が好きで、中でも「555(ファイズ)(2003年の作品)」と「W(ダブル)(2009年の作品)」が一番のお気に入りです。(残念ながら「ウィザード(2012年の作品)」以降は見ていません)
初めて見た平成ライダーは、上に挙げた「ファイズ」で、日曜の朝、旅先の旅館で何気なくテレビを見た瞬間、衝撃を受けました。
「なんて忙しいんだ」
昭和のライダーしか知識にないので、カット割りの細かさや、目まぐるしい場面展開に度肝を抜かれました。
それから、他のライダーや仲間たちが軒並みハンサムボーイなので、しばらく見ていても
「これ、誰が主人公なんだ?」
と、肝心なところが特定できずにいました。

そして何よりも、各種アイテムを自分の身体の一部のように使いこなしながら格闘する姿を見て、その器用さに『大人』を感じ、そのさりげないアクションに憧れた「大人」の私でした。

意外なことに、それが、新しい職場へ入っていったときに役に立ったことがあります。

大勢が一斉に採用され、同じ業務につく派遣やアルバイトの現場で、「初めてで知らないことだから」と、あまりオタオタしているとそのイメージが定着し、「できない人」というレッテルを貼られがちです。
だから逆に、その他大勢の中から抜きん出られてポジションを引き上げられるとか、認められてそれなりの発言力を持ちたい場合に最も効果的なのは、私の経験上では「仕事の速さのアピール」だったように思います。

「スピードよりリーダーシップ」とばかりに、やたらと周囲の話に首を突っ込んで仕切ろうとする人もずいぶん見ましたが、その人のその後を見ていると、結局嫌われてしまったり、嫌われないまでも上のポジションへ抜擢されるなど活躍の場が与えられないという結果になっていました。
実際に私自身が、エスカレーション案件の担当ポジションに引き上げられ、以前自分がいた現場を見るようになってから実感したことですが、そういった「仕切屋さん」は、口数が多いわりに件数をこなしておらず、周囲を巻き込んで時間を浪費するので、進行管理上ありがたい存在ではないのです。

そんな「仕切屋さん」も、業務立ち上げ早々の“草分け”の時期には一瞬頼もしく見えたりするのですが、実務が軌道に乗って組織的に機能するようになると、困った時の相談ごとは管理者にしてもらえば良いので、いわば「無資格のアドバイザー」に、勝手に他のスタッフを指導されると迷惑なことが多いのです。

話がそれてしまいましたが、この「仕事の速さ」を演出するのに、平成ライダーのアイテム使用アクションが一役買いました。
どういうことかというと、『初めて手にした、何の説明も受けていないアイテムを、いきなり的確に使いこなす』というところをマネたのです(というか、マネしたくなるのです。憧れゆえに)。

具体的な動作を記述してみると、たとえばこういうことです。

手に取って、一瞬だけ顔をそちらへ向け、すぐに視線を外し、ちょっとだけタメを作る(例えば手の中で数センチ投げ上げてキャッチし直す)。そして小さく逆に振ってわずかに勢いをつけてから所定の位置へかざしたりして、「ちょっと慣れた風」の「アクション」にするのが、意外に効果的でした。

こうやって詳細に書くと「バカじゃないの」と思われそうですし、実際、最初は自分で自分に対してそう突っ込みを入れています。自覚はあるのです。

その気持ちを抑えて、まずはアクションのパターンを作ってみます。
そして、現場の状況に照らして、あまりにそぐわないパターンには修正を加えます。
そうやって有効パターンを次々と作り、それらを組み合わせると、頭とアクション(リズム)で覚えるせいか、業務自体が案外早く習得でき、「自分なりの勝ちパターン(一定レベルの速度)」が出来てきます。

そこまでいけば、雑多なものを見た時に「どれを選択すれば(どこから始めれば)勝ちパターンに乗せやすいか」という組み立てをイメージしたうえで作業に取り掛かれます。

先にイメージが出来ているので、お得意の特撮ヒーロー的なアクションの連発が可能で、“落ち着いて慣れ切った風”を、業務現場で演出することができ、その姿を見た周囲の人から「求められて」アドバイスをしつつ、速度があるので実績も上げられるため、新人ながら信任されやすくなる状況を作り出せます。(ちなみに、速さに加えて正確さが要求されるのは言うまでもありません。念のため)

特撮の演出のモノマネにすぎないアクションが職場で意外なリアリティを発揮したのですが、考えてみれば番組制作者たちは、視聴者に「未知のことでも楽々とこなすカッコよさ」を見せるためにそのようなアクションを採用しているわけで、職場の大人たちに通用してもそれほどおかしなことではありません。

このように、番組を視聴したことがきっかけで仕事上の高い評価を生み、実利をもたらす一要因になったという点で、妙な話ですが、特撮ヒーローは私にとっては『実用的』でした。

こだわりや自分ルールの追求で実務能力を叩き上げるのがパワーユーザーになる第一条件ですが、それに加えて、周囲のニーズに適応した自分のブランドや個性で叩き上げた能力を演出すると、単なる“戦術的”から“戦術リーダー”へ近づくことができるようです。

地味なリアリティ(その1)は以上です。(その2)ではもうひとつ、特撮ヒーロー(仮面ライダー)を元にした話を展開してみたいと思います。

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