<第4回>称賛されないヒーロー

そのうち書いてみたい小説

電車のつり革をつかんで、座席に腰かけている人の顔を見ると、その人が降りる駅が見える能力を手に入れたサラリーマンの話。

ある朝、いつものように電車乗りこんでつり革につかまると、駅名が見えない客が大勢いる。

どこかの駅を過ぎた後、事故や地震により駅と駅の中間で停止し、ニュースでたまに見るみたいに、駅員の誘導でゾロゾロと線路沿いを歩くことになるのか?
あるいは・・
駅名が見えない客は、全員事故で死んでしまうのか?
自分自身はどうなる?

理解者ゼロの中、『そのとき』までに原因を突き止めて危険を回避しようと、手掛かりを求めて呻吟する孤独なヒーロー(?)

面白そうだけど、書くのにかなり疲れそう。
いや、書くことよりも疲れそうなのは、短時間の猛烈な活躍によって、わずかなダイヤの乱れくらいで済んでしまったため、普段とさして変わらぬ時刻に駅へ到着し、ヘトヘトな状態でスタートする会社での1日にうんざりする主人公に思いを馳せた時かもしれない・・

残念ながら、データベースから『兆し』を読み取ったとき、これと似た状況に陥ります。
まだ現実のことになっていない。
計算で出そうとすると沢山の可能性の中のひとつになり、議論の結果「不採用」になることがある。
でも『これ以外にない』としか言いようがないくらい、まぎれのない直観。

この『兆し』を感じたのが下っ端社員だったら、まさに上の小説のごとく、理解者も協力者もなく、成し遂げても認めてはもらえない。
仮説を活用するフレームワークがあって、日の目を見る土壌が出来上がっていれば違っていたのだろうけれど・・。

だから、経営者にわかってほしいことだと思っていましたが、今は【法人】に呼び掛けています。
戦略を目的にデータベース技術を使いこなす人材(戦略的パワーユーザー)を育てましょう、と。

<第3回>地味なリアリティ(2)

職場でしている日常動作が「特撮由来」だとバレなければ、周囲から一目置かれる存在になれるという話を前回は書きました。
もともとドラマの中でも、「クレバーでクール」を表現する効果を持ったアクションだと思うので、そのマネが板についてくると、実務経験を積んで実力の裏打ちがなされるにつれ、演出効果も高まってきます。
いわば実力に下駄を履かせてもらったようなもので、「良いふうに誤解してくれる周囲の人たち」からの高い評価を受けやすくなり、ポジションアップなどの結果につながることが期待できるというものでした。

今回は『地味なリアリティ』の2回目ですが、逆に派手さについて少しだけ触れておきます。
大人になって「特撮が好き」というとバカにされたり呆れられたりする場合があると前回書きましたが、それは話を受けた側の人が、特撮を非常に単純な子供向け番組と考えてしまう前提があるからでしょう。

つまり、子供の頃の特撮ヒーロー関連の記憶のうち、派手な部分(つまり必殺技とか変身ポーズ)だけがクローズアップされていて、「特撮が好き」という人がいると、無意識にその部分を当てはめて「あんなものが好きなんだ、この人」という判定をしてしまうのかもしれません。まあ、無理もないですね。

おそらく大抵の大人がそうなので、職場で「電王(2007年の作品)」の『オレ、参上』の大見得を切るポーズをやったら一瞬で空気が凍りますが、「555(ファイズ)(2003年の作品)」がファイズショットにメモリを装着し、携帯のエンターを押した後、エネルギー充填を待つ一瞬の「静」に相当する部分などは、職場内で何かの作業になぞらえてやっていても誰にもバレません。
それどころか、特撮好きを蔑む人から見ても、「経験豊富で洗練された業務遂行時の動作の特徴」として、むしろ畏敬の対象になることすらあります。(イヤイヤ、あなたの目の前にいるのは、いい年齢して平成ライダー気取りのオッサンですよ^^y)

当然ですが、特撮番組のヒーローといえども、ただ敵を倒すだけの描写では子供たちからも相手にされません。つまり、お気軽に派手な部分だけを作っていたらストーリーが成立しないので、地味なリアリティを追求する大人の要素がふんだんに盛り込まれなければならないのです。

『戦略的パワーユーザー』と銘打っている稿なので、話をいったん引き戻しますが、「特撮好き」を蔑む人は、派手に怪人を倒すストーリーの繰り返し(つまり戦術)部分の印象が強いのでしょうが、戦術部分をより魅力的にするための設定は非常に多彩です。
戦うシーンを際立たせる『番組全体の効果的な魅せ方(つまり戦略)』を成功させないと、グッズ販売のCMという側面も持つ特撮番組では、販売戦略上の課題をクリアできないからです。

例えば、主人公がどうやって生計を立てているのかは、あまり詳しく描かれませんが、常に底流に存在する問題です。ウルトラシリーズの主人公はほとんどが『地球防衛軍』みたいな組織の一員ですが、仮面ライダーでは主人公のほとんどが一般民間人で、生活感が前面に出てくるだけに、ここが全く描写されないとリアリティが保てません。

ちなみに、仮面ライダーの仕事に給料が支払われていることがはっきりと描写されているのは、私が知る限りでは「剣(ブレイド)(2004年の作品)」だけで、極めて例外です。
大抵は住み込みのアルバイトだったり、面倒を見てくれるオヤッさんのところに居候していたりで、資産家の家に引き取られた「カブト(2006年の作品)」、化け物退治の組織に属している「響鬼(2005年の作品)」、祖父と暮らす高校生の「フォーゼ(2011年の作品)」などの例外もありますが、いずれも人並みの生活が送れるだけの背景が準備されています。また、これに付随して家族や家族同然となる主要な登場人物も決められていきます。

こういった基本設定は、コスチュームや必殺技みたいな『子供向け』のものと比べると非常に地味です。
しかし、派手な業績には縁がなくとも、黙々と果たされなければならない大人の仕事です。

もうひとつ(実際はひとつどころではないでしょうが)私が注目する地味なリアリティは、「主人公は怪人出現をどうやって知るのか」です。
人が襲われているので一刻を争うのですが、私が見ていた「ウィザード(2012年の作品)」までの作品で、警官が主人公だったことはありません。つまり、真っ先に通報が入るという有利な立場ではないのです。

これに関して、最も単純でリアリティを感じないのは
「世界征服をたくらむ悪の秘密結社にとって最も邪魔になる仮面ライダーを真っ先に倒す」
という筋書きにして、ライダーを狙って怪人たちがやってくるという安易な設定です。
ひょっとしたら、昭和のライダーの中にはその主旨でできている作品があったかもしれませんが、現代の作品としては、それでは物足りません。

その設定では主人公はただ怪人がやってくるのを待っていればよく、それならいっそ他人に迷惑がかからないよう、人里離れた離島や山奥にこもっているのが最も合理的ですが、それでは物語になりません。
やはり、主人公は街なかにいて普通の生活を送り、襲われている一般人を守らなければ、『正義の味方』という看板を掲げていられないのです。

刑事を相棒にした「クウガ(2000年の作品)」、父の遺品のバイオリンがひとりでに鳴りだして出動を促す「キバ(2008年の作品)」、怪人に呼応する神秘の力でその出現を察知する「アギト(2001年の作品)」など、組織力、道具、超能力などによって知るというのが一般的で、主人公の仲間が近くにいない襲撃に対しては“ほったらかし”、“やられ放題”を徹底した「555(ファイズ)」などはかなり思い切った設定だったように思えます。

毎シリーズ重複しないように道具立てを考えても、『怪人出現を知る手段』などは本筋ではなく、それでいてメインストーリーに食い込む場面も多いので、結構な「縁の下の力持ち」的な責任も持たされます。

やはり、最大の見せ場である戦闘シーンへの転換点の設定が弱いと、全体の力が弱まってしまうのです。
重要なコネクト部分がギクシャクしていると、効率的に力が伝わらず、実行力が弱まると言い換えれば、色々なことに応用の利く「大人の表現」になります。

たとえば、発生させた力が『推進用として伝わる仕組み』が不十分なら、どれだけエンジン性能が高くても、飛び切り良いタイヤを履いていても、速度という結果にはつながらない、と、自動車のメカニズムの話へスライドさせられます。

企業に例えると、営業だけが強くても管理がザルなら利益が残らず、人事だけ強くても事業インフラがなければ商売にならない、と表現すれば、経営効率や投資などの形で話ができます。

そしていよいよ満を持して、【法人】のみなさん用のたとえですが、【法人】にとって部署は臓器です。
肺ばかりが強くても循環機能が弱ければ酸素の運搬が不十分で、全身の機能が不全になるでしょう。
腸がどんなに強くても胃が弱すぎて咀嚼力が無かったら、おそらく腸は食道と共に消化までを担当する役割を担い、栄養の吸収や免疫機能の中枢としての役割は十分に果たせなくなるでしょう。

では、各部署(臓器)が発揮する専門能力を、社内の適切な場所へ円滑に伝え、内部活動(維持・成長)と外部活動(社会とのつながり)に効果をもたらす要素とは何か?

さすがの私も「それはデータベースだ」とは言いません。
地味な答えですが、『全体として機能しやすい体内環境を作る、生活全般のバランス』が決め手だと思っています。

そして、そのための要素のひとつとしてデータベースを重視しており、その価値を最大限に活かすためには戦略的パワーユーザーという存在が有用だという持論でこのサイトを運営しています。

部署であれ臓器であれ、個性の強いキャラクターを集団の一員としてバランスよく働かせるためには、『好き勝手な必殺技のオンパレード』ではダメで、ベースをしっかり整え、ベース(日常生活)からピーク(戦闘シーン)への“つなぎ”もナチュラルに行うことで、ムダに力を消費することを避ける。
それは人体でも会社事業でも特撮番組でも一緒で、「大人向け」だからレベルが高いとか「子供向け」だからすべてが幼稚だということではなく、根本の土台をしっかりと作りこむことで、「狙ったターゲットに迫る的確な演出」ができ、それを象徴するものとして『地味なリアリティ』について語ってきました。

戦略的パワーユーザーには、この『地味なリアリティ』は非常に重要です。
どちらかというと偏りを追求することで実力を養成する戦術的パワーユーザーとは逆に、バランスをとるために技術力を発揮することが重要になるからです。

一応、『地味なリアリティ』については今回で終了します。
第1回で「戦略とは見えざるもの」と表現しましたが、そういうものを扱うパワーユーザーの姿を形にするために、まだまだ私も模索しながら書いていきたいと思いますので、興味のある【法人】さんは、是非ともお付き合い頂きたいと思っていますのでよろしくお願いします。

<第2回>地味なリアリティ(1)

大人になってしまうと、体面を気にして大っぴらに言えないことって、色々あると思います。
「いい年齢して何言ってるんだ」と思われてしまうこととか、男性の場合は「かわいい」なんて言われたら照れくさくなることなんかも、人前では言いづらかったりします。

「特撮ヒーローが好き」というのも、やはり大人になってからは言いづらいことのひとつだと思います。
子供向けの番組だから、それを好きになる大人は幼稚という解釈が根底にあるのでしょうか。どうも特撮好きは一般的な大人の世界では旗色が良くないようです。

かくいう私は、一時期の「平成仮面ライダーシリーズ」が好きで、中でも「555(ファイズ)(2003年の作品)」と「W(ダブル)(2009年の作品)」が一番のお気に入りです。(残念ながら「ウィザード(2012年の作品)」以降は見ていません)
初めて見た平成ライダーは、上に挙げた「ファイズ」で、日曜の朝、旅先の旅館で何気なくテレビを見た瞬間、衝撃を受けました。
「なんて忙しいんだ」
昭和のライダーしか知識にないので、カット割りの細かさや、目まぐるしい場面展開に度肝を抜かれました。
それから、他のライダーや仲間たちが軒並みハンサムボーイなので、しばらく見ていても
「これ、誰が主人公なんだ?」
と、肝心なところが特定できずにいました。

そして何よりも、各種アイテムを自分の身体の一部のように使いこなしながら格闘する姿を見て、その器用さに『大人』を感じ、そのさりげないアクションに憧れた「大人」の私でした。

意外なことに、それが、新しい職場へ入っていったときに役に立ったことがあります。

大勢が一斉に採用され、同じ業務につく派遣やアルバイトの現場で、「初めてで知らないことだから」と、あまりオタオタしているとそのイメージが定着し、「できない人」というレッテルを貼られがちです。
だから逆に、その他大勢の中から抜きん出られてポジションを引き上げられるとか、認められてそれなりの発言力を持ちたい場合に最も効果的なのは、私の経験上では「仕事の速さのアピール」だったように思います。

「スピードよりリーダーシップ」とばかりに、やたらと周囲の話に首を突っ込んで仕切ろうとする人もずいぶん見ましたが、その人のその後を見ていると、結局嫌われてしまったり、嫌われないまでも上のポジションへ抜擢されるなど活躍の場が与えられないという結果になっていました。
実際に私自身が、エスカレーション案件の担当ポジションに引き上げられ、以前自分がいた現場を見るようになってから実感したことですが、そういった「仕切屋さん」は、口数が多いわりに件数をこなしておらず、周囲を巻き込んで時間を浪費するので、進行管理上ありがたい存在ではないのです。

そんな「仕切屋さん」も、業務立ち上げ早々の“草分け”の時期には一瞬頼もしく見えたりするのですが、実務が軌道に乗って組織的に機能するようになると、困った時の相談ごとは管理者にしてもらえば良いので、いわば「無資格のアドバイザー」に、勝手に他のスタッフを指導されると迷惑なことが多いのです。

話がそれてしまいましたが、この「仕事の速さ」を演出するのに、平成ライダーのアイテム使用アクションが一役買いました。
どういうことかというと、『初めて手にした、何の説明も受けていないアイテムを、いきなり的確に使いこなす』というところをマネたのです(というか、マネしたくなるのです。憧れゆえに)。

具体的な動作を記述してみると、たとえばこういうことです。

手に取って、一瞬だけ顔をそちらへ向け、すぐに視線を外し、ちょっとだけタメを作る(例えば手の中で数センチ投げ上げてキャッチし直す)。そして小さく逆に振ってわずかに勢いをつけてから所定の位置へかざしたりして、「ちょっと慣れた風」の「アクション」にするのが、意外に効果的でした。

こうやって詳細に書くと「バカじゃないの」と思われそうですし、実際、最初は自分で自分に対してそう突っ込みを入れています。自覚はあるのです。

その気持ちを抑えて、まずはアクションのパターンを作ってみます。
そして、現場の状況に照らして、あまりにそぐわないパターンには修正を加えます。
そうやって有効パターンを次々と作り、それらを組み合わせると、頭とアクション(リズム)で覚えるせいか、業務自体が案外早く習得でき、「自分なりの勝ちパターン(一定レベルの速度)」が出来てきます。

そこまでいけば、雑多なものを見た時に「どれを選択すれば(どこから始めれば)勝ちパターンに乗せやすいか」という組み立てをイメージしたうえで作業に取り掛かれます。

先にイメージが出来ているので、お得意の特撮ヒーロー的なアクションの連発が可能で、“落ち着いて慣れ切った風”を、業務現場で演出することができ、その姿を見た周囲の人から「求められて」アドバイスをしつつ、速度があるので実績も上げられるため、新人ながら信任されやすくなる状況を作り出せます。(ちなみに、速さに加えて正確さが要求されるのは言うまでもありません。念のため)

特撮の演出のモノマネにすぎないアクションが職場で意外なリアリティを発揮したのですが、考えてみれば番組制作者たちは、視聴者に「未知のことでも楽々とこなすカッコよさ」を見せるためにそのようなアクションを採用しているわけで、職場の大人たちに通用してもそれほどおかしなことではありません。

このように、番組を視聴したことがきっかけで仕事上の高い評価を生み、実利をもたらす一要因になったという点で、妙な話ですが、特撮ヒーローは私にとっては『実用的』でした。

こだわりや自分ルールの追求で実務能力を叩き上げるのがパワーユーザーになる第一条件ですが、それに加えて、周囲のニーズに適応した自分のブランドや個性で叩き上げた能力を演出すると、単なる“戦術的”から“戦術リーダー”へ近づくことができるようです。

地味なリアリティ(その1)は以上です。(その2)ではもうひとつ、特撮ヒーロー(仮面ライダー)を元にした話を展開してみたいと思います。

北海道株式会社の【法人】鑑定を終えて<2>

話を小説に戻します。

北海道社は業務マニュアルがしっかり整っているので、受けた仕事をこなしていくのに適した「指示待ちタイプ」にとって働きやすい環境です。

だから、社内報の創刊委員に抜擢されて戸惑う人も多いかもしれませんが、私がいた会社と違って社長と社員の距離が近く、「どういう内容のものを目指せばよいか?」について、直接語り合う場も作れるでしょう。

指示待ちタイプの人は、先が見えないことに対して警戒心が強いが、最終形が明快になると、持ち前の高い適応能力を発揮して、組織的に機能するようになります。
やがて、企画にコミットするようになり、彼らの中に「企画業務」に長けたキャラクターが育つことがあります。

たぶん、これまでの日常業務を10年やっても身につかなかったであろう能力を、早い場合には数か月で会得します。
社内報企画では社内向けの企画力が養成されますが、本来企画能力に内も外も関係ないでしょうから、養った実力をもって外部に働きかけていく社員も出てくるでしょう。

北海道株式会社は、まず「自社のファン」を作り、ファンの中から新規客を獲得していくマーケティング手法を成功させ、同社の課題『年間を通じた恒常的売上』の達成を目指すべきと「あなた」は判断しました。

指示待ちタイプの社員たちが、その目論見に一役買ってくれると読んで、社内報について【法人】に助言しました。
だから、先が見えないことに警戒心の強い指示待ちタイプに、明快な最終形を示す必要があります。

ちなみに、私の社内報創刊経験で言えば、先ほど述べた『創刊準備号のイメージ』が重要で、その役割は、ナナさんの社内報企画ソリューションが担ってくれました。

・社内報を作るとどういうことが実現されるのか
・制作の困難さの克服方法
・自社から提供可能なサービス(取材・原稿起こし・撮影・印刷等)

これらのことを、経験豊富なプロが、具体的事例を伴って解説し、成功イメージを見させてくれたのです。
そして、次に何を手掛けるべきことを示してくれるので、自分が関わる作業とスケジュールが明確になってきます。
こうして、消極的だったメンバーの頭の中には明快な筋道が描かれ、組織として動く形になりました。

メンバーの頭の中に展開した『創刊準備号』は、私が作ったわけではないので偉そうな顔はできませんが、とにかくこのような経緯で、私たちの社内報は無事創刊し、その後歴史を重ねています。

北海道社がどんな形で進めていくことになるかは、同社の個性によると思いますが、出来上がったら是非とも見させてもらいたいものです。

北海道株式会社の【法人】鑑定を終えて<1>

小説サイトのほうが、ようやく一段落しました。
こちらに掲載しています
前回の反省にもかかわらず、小説はより長くなってしまい、脱稿に苦しむことになりました。
それというのも、「【法人】の手相」に加え、今回からは「【法人】の記憶(データベース)」という要素を加えたからです。
今後はこのふたつを状況に応じて使い分ける形で進みます。

さて、『北海道株式会社』。
「大卒社員の採用にこだわる中卒の社長」というトピックで、その秘密を解き明かしていくストーリーになりました。

小説の中では書かなかった描写ですが、社長の机の引き出しには一枚のスナップ写真がしまわれています。
神輿の前で並んで立つ、威勢の良いねじり鉢巻きとハッピ姿の男ふたり。
若き日の実の父と、その親友であり“第二の父”でもある、北海道株式会社の創業社長です。

残念ながら、現社長はもはや二人と会うことはできず、力を借りることもできません。
だからこそ、経営者として、男として、重大な決断を下さねばならぬとき、憧れの父たちを想い、力を得ているのでしょう。

こういう写真を机の上に飾る人は時々見ます。
北海道株式会社の創業者でもあるから、もっと目立つところに置いても良いと思うのですが、現社長は個人的なものとして、社員の目につかない場所にひっそりと保管しています。

鑑定の中で『あなた』は【法人】が語る会社と社長の来歴に感動します。
せっかくの感動秘話を、そのままにしておくのがもどかしく、なんとか社員たちに知ってもらいたいと思います。

ソニーの設立趣意書ほどのものではなくても、“創業神話”みたいなものがあればよいと考え、社内報を思いつきます。

小説の中では「社内報の専門企業」へのプロデュース依頼を示唆していますが、これは実在する企業、株式会社ナナ・コーポレート・コミュニケーション(この稿を書くにあたって再確認したら、現在は「ナナ総合コミュニケーション研究所」に変わっていました)を念頭に置いて書きました。
この会社には、かつて私自身が直接関わったことがありますので、少しその時のことを書きます。

当時私のいた会社では、創業神話を作る目的ではなかったのですが、経営トップが社内報を思い立ち、私は編集委員の一人として加わることになりました。
『戦略的パワーユーザー<1>戦略とは見えざるもの』の稿でも少しだけ書きましたが、私は命じられる前から社内コミュニケーション活性化を狙って、ネット上で交流の場を作ろうと画策しており、社内報についても調べ上げていました。
だから、トップがこのタイミングで創刊を命じたことは、いわば渡りに船といったところです。

当初メンバー5人のうち、私だけが
「この試みは必ず成功する」
と信じており、それは良かったのですが、集団の中では完全に浮いた存在でした。

命じられたから集まっただけにすぎない他のメンバーにとって、企画会議などは見返りのない本務外の仕事ですので、建設的な意見は出ません。
直属の上司の(いつまでやってるんだ。仕事サボって)という白い眼を、常に気にしています。

それに、“命じられた社員”にとっては非常につらいことですが、『何の作業をすればよいか』について誰も明確な指示を出してくれません。
これは切実な問題です。

普段の仕事とは分野がまったく違い、日常の延長ではないので、慣れ親しんだ作業(得意技)は通用しません。
すると、付加価値をどう作ってよいかわからなくなるのです。

私が関わった社内報創刊プロジェクトでは、編集長自身も諦めの境地にいました。
「壁新聞みたいなモノしか頭になかった」
と、彼はのちに、私に打ち明けました。
別なメンバーはこう言いました。
「そのうち形骸化して、『やってます』的な言い訳のためにする無駄な作業になるだろうなと思ってました」

ひとりだけ意気込む私が、無理矢理な企画を作り、印刷会社の見積もりを取って依頼すれば、一応社内報はできたと思いますが、それでは上の二人がコメントしたレベルにしかならなかったでしょう。

どうしても、最初にメンバーの意識を変えるところから始めなければならず、そのためには『創刊号』を出す前に、全員の頭の中に『創刊準備号』をイメージさせる必要があったのです。