▲▲社の【法人】鑑定を終えて

▲▲社の鑑定が終わりました。⇒小説はこちら
4月初旬に4分割程度で書き終える予定だったのが、予想外に長引きました。
初回なので、鑑定をするときのポイントなどもちりばめていくうちに、ついつい長くなってしまいました。
あまり長いと読みづらくなってしまうので、今後の課題にしたいと思います。

会社の歴史的背景や、事業フローの図解など細かな描写をしていますが、この▲▲社というのは特にモチーフはなく、完全に私の創作です。
今回は、2代目社長と古参社員たちの関係悪化がテーマになっていますが、こういった2代目経営者が直面する問題は、沢山の社員がいる規模に限らず、個人商店でも普通に起きていることでしょう。

「強い親父」に圧倒されて、壮齢になっても常に親父の顔色を気にしながら接客している商店主もいるし、番頭さんのような有力な古参社員に何かとダメ出しされ、あたかも部下や後輩のように扱われている社長もいます。

▲▲社の2代目社長は、幸いにも親父さんや番頭さんに振り回されることなく、社内に不動の立ち位置を確保することができました。低迷からのV字回復を成し遂げた実績が、親父さんや番頭さんに認められた大きな要因のひとつであることは確かでしょう。
では、そういった、周囲を納得させる実績を得られないまま、単に親父さんの体調が思わしくないからとか、高齢になってきたからという理由で経営トップの座を譲られたなら、2代目はいつまでも小僧扱いされてしまうのでしょうか。

私は、▲▲社の社長はきっと、そうはならなかったと思います。
小説の中では書きませんでしたが、彼は以下のような意図で社業に取り組んでいます。

 【願望】  地域と国家に尽くす経営者になる
 【目的】  ▲▲社を日本一「官と学に強い流通商社」にする
 【目標】  全社を新流通体制に組み直してシンプルな管理体制にする
 【戦略】 旧来の煩雑な業務フローを払拭
古参社員の豊富な経験で自社特性を前面に出してブランディング強化
 【仕組】 基幹システムによる作業環境の統制
若手社員の積極的な抜擢
古参社員の余力を作り出す
 【戦術】 旧ベンダを新体制へ誘引
新仕入ベンダ開拓
新商品ラインナップの営業

※願望・目的・目標・戦略・仕組・戦術、という流れは、ランチェスター経営の竹田陽一先生が提唱しておられる、戦略と戦術の区別の仕方を参考にしています。

大学卒業と同時に親父さんの会社に就職した2代目は、当然ながら他社のことを知らないので、自分の会社のカルチャーにどっぷりと染まって、戦術(道具を使ってすることや繰り返し作業)を徹底的に極めてきました。

通常の従業員的な感覚では、そんな毎日の連続で会社は存続していくように見えるため、ひたすら戦術を磨くことに注力し、戦略の勉強はしないまま月日が経ってしまいがちです。

ちなみに、戦略とは将軍の術。「軍全体の効果的な勝ち方」であり、つまり経営戦略とは「会社全体の効果的な業績アップの方法」で、営業戦略とは「営業全体の効果的な成果の上げ方」だそうです。

たとえば、飛び込み営業を繰り返すだけでは効果的な営業管理にはつながらないため、新規開拓の名人が戦術の実績を買われて営業マネジャーに抜擢された後、管理能力の点で挫折したりするケースがあります。
戦術は重要ではあるが、ある時点からは戦略に切り替えないと、優秀な管理者にはなれないということです。
竹田陽一先生の表現は面白くて「成人病が出始めるまでに戦略を身に付けよ」といったことを言います。
戦術の7割は長時間労働で体力勝負のため、身体にガタが来る前に組織を動かして仕事する術を会得する必要があるからだそうです。

だから、特に経営者は戦略と戦術を明確に区別できるようにならないと、会社全体が間違った方向へ向いてしまい、経営を構成する各要素への戦力配分がうまくいかず、それが業績に跳ね返るというのが大事なポイントになるそうです。

▲▲社の2代目は、戦略について勉強したことがあるのでしょう。
「自分は何のためにこの会社を経営していきたいのか」という個人の『願望』のレベルが高いので、願望実現のための『目的』と、目的を達成するためのとりあえずの『目標』までが割とスムーズに設定されています。
兄貴分たちと熱心に戦術に取り組む姿勢を見せて先輩たちの信頼を得、戦略発想で会社の方向性を決めていける資質を備えた彼は、V字回復の立役者というタイトルを得なくとも「小僧扱い」はされなかったと思います。

そんな彼ですが、『戦略』を展開する『仕組』のところで、もう少し親父さんや番頭さんたちとコミュニケーションがしっかり取れれば問題はより小さくて済んだのでしょうが、通販事業確立の手並みが良すぎて、先達の意見に耳を貸すよりも、自分の感性で押し切ったほうが効果が高いと思い込んでしまったのかもしれません。

戦略の立て方に重大な欠陥があった場合、それを戦術でカバーすることはできないというのが、竹田流ビジネスモデルの重要論点ですが、今回の場合は、それを基幹システム導入で解決しようとしました。
しかし基幹システムは、戦略目的を達成するために行う『戦術』を大幅に高速化させる『仕組』のひとつですから、戦略上に問題点を抱えている場合、それをも高速化させてしまいます。

今回の小説の中では、実直に働いてくれた古参社員を軸に、より高度なマーケティングを狙った社長が、肝心かなめの古参たちとのコミュニケーションに失敗していますので、戦略に齟齬が生じています。
システム会社は「デュアル製品マスタ」など、テクニックを凝らして対応策を提案しますが、それは根本的な間違いを助長するようなもので、もしこれが完成した場合の末端業務は「システムのお守り」に大幅に戦力を消耗させられることになります。

しかし、構想段階で話している関係者は、こういうことまで思いが至らないことがほとんどです。
システム会社は、フールプルーフの対策には詳しいですが、それは操作方法への対応であり、システム入力に至るまでの業務フローが不適切だった場合の対応まではできません。
いわんや、戦略の問題点まで踏み込むなんて及びもつきません。それは開発を依頼するクライアント側の責任範囲だからです。

でも、残念なことにシステム導入の打ち合わせでは、依頼会社は「その部分はシステム会社がやってくれる」と境界線がはっきりしないまま都合よく解釈することがよくあります。
これが、システム導入で失敗する最大の要因だと私は思っています。
その点をはっきりと指摘するシステム会社も多いですが、プロジェクトマネージャーにその指摘をしても、それを受けて社内意見をまとめる力がないことが多いのです。誤解を恐れずに言えば、ほとんどすべてのケースがそれに当てはまると思っています。

本来システム導入のプロジェクトは戦略展開レベルなので、会社規模にもよりますが、担当するのは経営トップや取締役クラスの、ある程度経営に対するオーナーシップを持った人でないと務まらないことだと思います。
それなのに、システム室とか総務部とか、配属部署や担当業務が「システム向き」だからという理由でそれ以下の人物に託してしまうのが、むしろ常識であるのが現状です。
そういうメンバーがどんなに集まっても、戦略上の問題点にスポットが当たる可能性は極めて低くなりますが、システム導入の現場はそのように形成されてしまうことが大半です。

いっそのこと、経営トップを飛び越えてあなたがた【法人】に訴え、みなさんが自在に醸し出せる「社内の空気感」や特定人物の「誘導」により、システム導入時の判断ミスを無くしたいと考えたのが、この小説を生み出した源泉です。

今後もこの点に絞って「あなた」が活躍する物語を作っていきますので、【法人】の皆さまは社内でシステム検討の話が湧いてきた際は、こちらを参考にしてみてください。

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